患者さまが病院に来院されると、適切な治療のために適切な
診断が必要になります。患者さまの体より採取された病変の組
織から顕微鏡用のガラス標本がつくられます。この標本を顕微
鏡で観察して診断するのが病理検査です。


「病理検査」は最終診断として大きな役割を果たします。


 検査する標本は組織(臓器の塊)を薄く切り、スライドガラス
に張って染色したものです。どのくらいの厚さかというと3μ
mくらいで333枚重ねてやっと1mmになる厚さ(薄さ)です。
薄切標本は吹けば本当に飛んでどっかにいってしまいます。

 結果が出るまでは生の組織を固定し、標本製作と検鏡、報告
入力、報告出力の段階を経て通常1週間かかります。
 難しい標本は 特殊染色で調べるため結果を出すまで数週間も
かかる場合もあります。

 

病理診断について簡単な解説パンフレットもあります。

生検組織診断


 治療方針を決めるために、胃・大腸や肺の内視鏡検査などを
行った際に病変の一部をつまみ採ったり、皮膚などにできもの
ができたときにその一部をメス などで切りとったりして、病
変の一部を標本にします。

この検査を生検といい、その診断を生検組織診断とよびます。
  

手術で摘出された

臓器・組織の診断


 摘出された臓器・組織は、病理医が肉眼で病変の部位、大き
さ、性状、広がりを確認し、診断に必要な部分を必要な数だけ
切りとり、臨床検査技師が顕微鏡標本をつくります。

 病理医が標本を顕微鏡で観察し、どのような病変がどのくら
い進行しているか?手術でとりきれたのか?追加治療が必要
か?、がんの場合、悪性度や転移の有無など治療方針の決定に
役立つ情報を臨床医に提供します。
  

手術中の迅速診断


 病変が体の深い部分にあるため生検が難しい場合、手術前に
病理診断ができず、「術中迅速診断」を行います。

 術中迅速診断では、手術中に採取された病変組織から20分
程度で病理診断が行われます。
  診断結果は執刀医に連絡され、手術方針が決定されます。
 病変がとりきれたかどうかの確認のため臓器・組織の断端を
調べたり、がんの転移が疑われる部分を調べて手術で切除する
範囲を決めたりするにも、術中迅速診断は役立ちます。
  

病理解剖


 ご遺族の承諾のもとに、病死された患者さまのご遺体を解剖
させていただくのが、「病理解剖」で、剖検ともよばれていま
す。

 生前の診断は正しかったのか、適切な治療がなされていたの
か、治療の効果はどれくらいあったのか、死因はなにか、と
いったことを判断します。
 病理解剖では、診断に必要な臓器をとりだして、2時間ほど
で終了します。
 ご遺体は解剖後に清拭されご遺族のもとに戻されます。病理
解剖の肉眼所見は、解剖を行った病理医から主治医へ報告さ
れ、ご遺族に説明されます。なお、顕微鏡所見を含めた最終診
断にはもう少し時間が必要です。