血球減少に対する処置 v2009.04

白血球減少に対する処置

GCSFによって発熱の頻度は減少しない
 GSCFによって好中球減少症は予防できない
 Evidence:有熱性好中球減少症の期間を有意に短縮できる

G-CSF使用に関するguideline (ASCO, 1996, 2000)
■初回治療からの予防的投与は行わない。
■ 好中球減少があっても発熱のみられないうちは原則として投与しない。発熱をきたしリスクファクターを有する場合に使用。
■ PBSCT,ABMT:ルーチンでOK
■ 化学療法と放射線療法の同時併用を受ける患者への投与は避ける
■ 投与期間:化学療法終了後、24-72時間後に開始、好中球が10,000/uLを超えるまで

ASCO2000

 

「がん化学療法による好中球減少症」に関する投与開始基準(日本)

●悪性リンパ腫、小細胞肺癌、胚細胞腫瘍(睾丸腫瘍、卵巣腫瘍など)、 神経芽細胞腫(成人、小児)、小児がん
 通常、がん化学療法剤投与終了後(翌日以降)から投与を開始する。
なお、本剤投与の開始時期及び中止時期の指標である好中球数が緊急時等で確認できない場合には、白血球数の半数を好中球数として推定する。

●その他のがん腫(成人、小児)
通常、がん化学療法により好中球数1,000/mm3未満で発熱(原則として38℃以上)あるいは好中球数500/mm3未満が観察された時点から投与を開始する。
また、がん化学療法により好中球数1,000/mm3未満で発熱(原則として38℃以上)あるいは好中球数500/mm3未満が観察され、引き続き同一のがん化学療法を施行する症例に対しては、次回以降のがん化学療法施行時には好中球数1,000/mm3未満が観察された時点から投与を開始する。
なお、本剤投与の開始時期及び中止時期の指標である好中球数が緊急時等で確認できない場合には、白血球数の半数を好中球数として推定する。

日本の保険では好中球数 5,000/mm3以上(WBC 10,000/m3以上)で投与を中止する基準となっている

日本癌治療学会2001

 

●2005年、大規模meta-analysisにより、GCSFの予防投与(抗癌剤投与24-72時間に投与開始)が、発熱性好中球減少症(FN)の頻度、感染症関連死を減らすことが報告された

FNリスク20%がGCSF予防投与推奨の閾値(従来40%とされていた)

FNリスク10-20%の場合、その他の要素に応じて予防投与が推奨される
 →BEP療法、MEC療法が該当する

その他の要素:高令(65才以上)、前回コースでFNを発症、PS不良)がある場合、抗癌剤投与終了24-72時間後からの予防的GCSF投与を検討せよ

ASCO2006、EORTC2006

 

 

【血球減少時対応 各論】

これらのASCO指針に準ずると、GCSFを使用する機会は非常に限られる

「FNの発症時以外はGCSFは使用しない」

であるが、日本では保険適応があることから、

 1) G4好中球減少時、
 2) 前回G4好中球減少症の既往がある場合は、G3好中球減少時
にGCSFの投与をおこなってもよい

精巣腫瘍

【BEP療法】

BEP療法のFNリスクは10-20%
保険適応あり
GCSF投与を行う

(D7、D8スキップ)、 D9からGSCF (G75ug)を連日予防投与する
Nadirを越えた後、WBC>10,000/ul(好中球>5,000/ul)まで継続

 1)先のコースで FNが生じた場合
 2)リスクを有する(PS3以上、既に感染あり、尿路ステントあり、年令45才以上)

の場合は、
(D7、D8スキップ)、 D9からGSCF (G150ug)を連日予防投与する
(Nadirを越えた後、WBC>10,000/uLを確認するまで)

【TES-TIN】

BEP療法に準ずる

 

【GC】

GC療法ではFNリスク<10%程度

予防投与を行わない

FNが生じたときは、次のコースで抗癌剤の減量

 

【MEN】

MEN療法ではFNリスク20-40%程度

予防投与を行う

D7からGSCF (G150ug)を連日予防投与する
Nadirを越えた後、WBC>10,000/ul(好中球>5,000/ul)まで継続

FNが生じたときは、次のコースで抗癌剤の減量

【TIN/PIN】

TIN/PIN療法ではFNリスクは 25% (Shinohara論文)

予防投与を行う

D7からGSCF (G150ug)を連日予防投与する
Nadirを越えた後、WBC>10,000/ul(好中球>5,000/ul)まで継続


FNが生じたときは、次のコースで抗癌剤の減量

 

非予防投与時の対応

 

総WBC
(好中球数)

対処

 

3,000≦
(1,500-)

無治療

mild
(grade 2)

2,000-3,000
 (1,000-1,500)

外来通院の場合は外来管理。
受診時〔火曜、金曜)、採血

入院の場合、大部屋で可。
GCSF投与せず経過観察。

moderate
(grade 3)

1,000-2,000
 (500-1,000)

外来の場合、外来管理
受診時〔火曜、金曜〕、採血
(過去にG4骨髄抑制ある時のみ、
Gran 150ug投与(隔日)を検討)

入院の場合、大部屋で可。
Gran150ug投与(連日)

severe
(grade 4)

-1,000
 (-500)

外来の場合、
受診時、〔火曜、金曜〕、
採血およびGran150ug投与(連日)。

入院の場合、(空気清浄機管理)
Gran 150ug sc.(連日)
(出血傾向あるときはゆっくりiv)

その他の予防的処置なし



熱発時対応

 

Febrile Neutropeniaの定義

1.発熱(1回の口腔温≧38.3℃/体温≧38.0℃が1時間)

2.好中球減少(好中球<500/好中球<1000/ulで500/ulに減少すると予測される場合)

 

内科的緊急状態であるので
早めの対応が必要
北大感染症ガイドラインに従う

北大のガイドライン

1.発熱(1回の腋窩温≧37.5℃)

2.好中球減少
(好中球<500/好中球<1000/ulで500/ulに減少すると予測される場合)


初期管理

まず 入院
以下の診察・検査を行う

1

培養チェック 尿、便、喀痰、血液(2セット)
2 身体所見 腹痛、腎部痛、聴診等
3 胸部写真
血液ガス
 
4 採血 検血、生化、CRP、β-D-グルカン、カンジテック、
(CMVアンチゲネミアは削除)

 

リスクを考慮して抗菌薬・抗生剤を使用し、3−5日後に再評価を行う

低リスク
高リスク
経口抗菌薬
単独療法
併用療法

クラビット300mg/分3
±
サワシリン 1500mg/分3

マキシピーム 2.0g x2
or
モダシン 1.0g x4

マキシピーム 2.0g x2
plus
アミカシン (15mg/kg) x1

マキシピーム 2.0g x2
plus
バンコマイシン (15mg/kg) x2

 

発熱時の低リスクを判定するためのスコア

項目
Score

症状なし
軽度の症状
中等度の症状

5
5
3
低血圧なし
5
慢性閉塞性肺疾患なし
4
固形腫瘍/真菌感染症の既往なし
4
脱水症状なし
3
発熱時の来院
3
年令<60才
2
計 (低リスク)
21以上

バンコマイシンの適応例

1.CVカテ感染が強く疑われる
2.ペニシリン耐性球菌・MRSAを保菌している
3.血液培養でG陽性球菌陽性
4.ショックなどで血行動態が不安定
5.viridans streptococcus敗血症の高リスク症例

3−5日後、再評価

解熱した
発熱持続
起因菌判明
起因菌不明
起因菌確定
起因菌不明
症状安定
症状悪化
抗菌薬治療の調整
少なくとも4日間以上治療継続
感受性薬への変更・追加(G陽性菌ではグリコペプチド考慮)
初期治療継続

アミノグリコシドの追加

βラクタムの変更

真菌治療

 

入院にて対応する




血小板減少症に対する処置

血小板輸血に関するguideline (ASCO, J Clin Oncol 19:1519-1538. (C) 2001)

 

血小板数

対処

 

75,000≦

無治療

mild
(grade 2)

50,000-75,000

外来の場合は外来管理。
受診時(火曜、金曜)採血。
過度の運動負荷を避ける。
出血あれば再来・救急外来へ。

入院の場合、経過観察。

moderate
(grade 3)

25,000-50,000

外来の場合、極力安静。

入院の場合、大部屋管理。
極力安静
(低下スピードに注意し、速いときはCare。)

severe
(grade 4)

-25,000

入院の上、個室管理。

10,000以下の場合、血小板輸血
(膀胱癌の場合、20,000以下で検討要)

 

更新履歴

2008/06/02 v1.0


2008/June/2 v1.0 文責:原林