2010.10.16 札幌 第381回日本泌尿器科学会北海道地方会 特別講演
安住 誠 他施設
腎癌、膀胱癌に対する免疫標的分子としてのSTEAPの可能性

【目的】Six-transmembrane epithelial antigen of the prostate (STEAP)は6回膜貫通部位を有する細胞表面蛋白質であり、種々の癌においてその発現が亢進していることが知られている。STEAPを標的抗原として活用できれば、STEAPを発現している腫瘍において有効な免疫療法を構築できる可能性がある。転移を有する腎癌、膀胱癌は既存の治療法では良好な治療成績は得られておらず、予後不良である。免疫療法は副作用が少なく、有望な新規治療法の一つである。有効な抗腫瘍免疫反応を惹起、維持するには、キラーT細胞の誘導のみでは不十分で、ヘルパーT細胞 (HTL)の誘導は不可欠である。腎癌、膀胱癌細胞株を認識するSTEAP特異的 ヘルパーT細胞を誘導し、その機能解析を行った。【方法】免疫組織化学染色にて腎癌、膀胱癌組織のSTEAPの発現を検討し、ウエスタンブロット法で腎癌、膀胱癌細胞株中のSTEAPの発現の有無を検討した。次に健常人末梢血CD4+T細胞をSTEAPペプチドでパルスした樹状細胞で刺激し、STEAP特異的HTLを誘導した。これらのHTLがSTEAPを発現し、HLAが合致する癌細胞株を認識できるか共培養し、培養上清中のIFN-γを定量した。最後に腎癌、膀胱癌患者末梢血単核球をSTEAPペプチドと共培養し、STEAPに反応する分画の有無を検討した。【結果】免疫組織化学染色にて、STEAPは高頻度に腎癌、膀胱癌組織中に発現を認め、ウエスタンブロット法によってSTEAPタンパクの発現の亢進が腎癌、膀胱癌細胞株中に認められた。STEAP特異的HTLは健常人から誘導可能で、ペプチド濃度依存性にIFN-γを産生した。得られたHTLはSTEAPを発現している腎癌、膀胱癌細胞株をSTEAP特異的かつHLAクラスII拘束性に認識し、大量のIFN-γを産生した。腎癌、膀胱癌患者末梢血単核球中にSTEAPペプチドに反応し、IFN-γを産生するT細胞前駆分画を認めた。【結論】STEAPが腎癌、膀胱癌に対して、有用な免疫標的分子として機能することが示唆された。