2012(第43回)腎癌研究会 分子標的薬再投与を行った転移性腎細胞癌の2例 北海道がんセンター 安住誠、大澤崇宏、三浪圭太、原林透、永森聡 【緒言】転移性腎細胞癌治療において現在本邦では4種の異なる分子標的治療剤が用いられている。標的とする受容体が各々異なるため、腫瘍進展を認めた際、他剤に逐次投与されることがある。近年分子標的薬逐次投与の後、再投与が有効であったとの報告がある。今回我々は転移性腎細胞癌に対し分子標的薬逐次投与の後にスニチニブおよびソラフェニブの再投与が有効であった症例を各1例経験したので報告する。【症例1】67歳、女性。他院にて、他疾患精査中に発見された初診時より肺転移、膵転移を伴う左腎癌の診断。腎摘出未施行で、インターフェロン投与を開始。当初SDであったが、PDとなり、ソラフェニブ導入するもPDのため、当院にてスニチニブ導入。一時PRとなるも、血痰出現、肺門リンパ節増大などPDのため、ソラフェニブ+インターフェロンに変更。Grade3食欲不振、肺門リンパ節増大、血痰のため肺門リンパ節に放射線照射の後、エベロリムスに変更するも、PRのため、スニチニブの再投与をおこなったところ、肺転移、縦郭リンパ節転移の縮小、胸水減少を認めた。スニチニブ休薬期間中に腫瘍増大を認めたため、2012年4月現在25mg/dayで継続投与中である。【症例2】58歳、男性。他院にて骨生検で発見された初診時より肺転移、骨転移を伴う左腎癌の診断。インターフェロン投与で反応をみた後、腎摘出施行。肺、骨に新病変出現しPDと判断し、ネクサバール投与開始。スニチニブ、エベロリムスと逐次投与の後、ネクサバール再投与を行ったところ、肝転移の縮小を認めた。その後PDとなり、スニチニブに変更するも、病勢進行し、初診より3年8か月で癌死した。【考察】転移性腎細胞癌治療において、一度治療抵抗性を示した分子標的薬の逐次投与後再投与は忍容性が保たれており、有効な症例があるため再投与の検討をする価値があると考えられた。