TOP ー NEW  ー 20121110

市民のためのがんフォーラム 開催

がんセンターホールにて開催しました。

近年我が国において前立腺癌症例は増加の一途をたどっています. 生活環境や食生活(特に脂肪の摂取量)がますます欧米化している日本人は、今後前立腺癌が増加する可能性が非常に高いと考えられています.実際に日本での前立腺癌は年々増加し,2009年には43,000人が罹患しており,特に65歳以上の男性では罹患率のトップとなりました.2020年には80,000人の罹患が予測され,肺癌に次いで2番目に多い癌になると考えられています.

日本での2008年の前立腺癌死亡数は約1万人ですが、2020年には2万人を超えると予測されています。 転移の認めない臓器限局前立腺がんの治療は,@待機療法,A内分泌療法,B放射線療法,C手術療法と多岐にわたります。治療の中心である手術療法・放射線療法の治療効果についてはほぼ互角となっています。

一方,前立腺周囲には尿禁制に関与する尿道括約筋,勃起に関与する勃起神経,前立腺背面には直腸があるために,前立腺癌治療により尿失禁・ED(インポテンツ)・排便症状の悪化など尊厳に関わる治療関連の副作用があり,治療前後のクオリティ・オブ・ライフ(QOL : 生活の質)についても十分に考慮する必要があります。

当院では手術療法として開腹手術に比べ低侵襲である腹腔鏡下前立腺全摘術を施行しています.放射線治療としては体の外から分割して放射線をあてる外照射:強度変調放射線治療と線源を前立腺に挿入し体の中から放射線をあてる内照射:小線源療法(ブラキテラピー:略してブラキ)を行っています. ここではこの小線源療法について説明させていただきます。

 

小線源療法は放射線療法の一つで前立腺の中に放射性同位元素(ヨウ素125)を埋め込み,1年ほどかけて前立腺に放射線照射する方法です.当院では全身麻酔にて放射線科医師とともに会陰部より前立腺に針を刺入し線源を挿入しております.治療時間は1時間前後で入院は5日間,治療翌日から通常の日常生活が可能です.手術療法は2週間の入院,外照射は7週間の通院が必要ですが,小線源治療では1回線源挿入で治療が終了します.治療の副作用は,前立腺に線源が挿入されることにより一時的に前立腺がむくみ,排尿困難・頻尿症状が出現する事です. 1年程で軽快します.頻度は低いのですが,前立腺背面の直腸や膀胱にもわずかに照射され,炎症から出血を起こす事があります.またEDも30%程に認められると報告されています(実際に治療の関与したもの加齢などの影響か判断が難しいとされています).小線源療法の良い適応は低リスク癌で,手術治療と治療成績は同等と報告されています.当院での成績でも7年非再発率92%と手術療法と同等でした.また大きな前立腺は線源の挿入が困難であること,前立腺肥大症の手術後は線源の挿入が困難であることなど細かな注意点があり,専門医師の判断が必要であります.治療に伴う当院でのQOL調査では排尿・性機能において手術療法よりも良好な結果でした.