限局性前立腺癌の根治療法:全摘手術と小線源療法について

骨やリンパ腺などへの転移が無く、周辺臓器にも浸潤していない限局性の前立腺癌は、根治療法が可能ですが、その治療法には前立腺全摘術と放射線療法があります。2003年より当院ではヨード125を用いた密封小線源を多数前立腺内に刺入する放射線療法の一種である小線源療法を開始いたしました。
小線源療法と全摘手術は、それぞれ適応が少しずつ異なるほか、長所・短所・副作用などの特徴が
異なります。患者さんの病状をよく検討した上でより適した方針を決めることになりますが、
患者さんのご希望をふまえて治療法を選んで頂くことも可能です。
小線源療法は泌尿器科と放射線科の共同で行う治療ですが、その適応については泌尿器科医が
ご相談の窓口になります。
 

前立腺全摘手術の特徴

*前立腺内に限局した癌をそのまま前立腺ごと摘出しますので、摘出標本をくまなく検索することにより癌の広がりや悪性度、被膜や断端、精嚢などへの浸潤の有無、リンパ節転移の有無などが確実に術後診断することができます。術後はすべての前立腺組織がなくなりますのでPSAは速やかに測定感度以下(通常0.01以下)となり、治癒したかどうかの判定を明確に行うことができ、再発の監視もPSAの動きをみることで容易に行えます。

*適応は限局前立腺癌のほぼすべてが対象となりますが、PSAが20以上、癌の悪性度を示すグリソンスコアが7-8以上あって、被膜や断端・精嚢などへの癌浸潤が疑われる場合には、ネオアジュバント療法といって治療成績を向上させるために手術前に内分泌療法を6ヶ月程度行ってから手術することもあります。
実際の手術は、臍から12 ̄13cmの縦切開を行う開腹手術が日本では標準的に行われていますが、当院では2008年より腹腔鏡手術を導入しました。全身麻酔で3時間前後、出血の量は200から600mlくらいで輸血を要することほぼはありません。以前行っていた希釈式自己貯血法(自分に対する献血といってよいでしょう)は現在行っていません。
平均の入院期間は、当科では約2週間を見込んでいただいております。

*全摘手術の合併症は、手術後にみられる尿失禁と、性機能障害(勃起障害)です。
尿失禁の程度は患者さんによって個人差が大きいのですが、多くの場合一過性で3ヶ月程度で日常生活に支障がない程度に改善してくるのが普通です。
勃起障害は前立腺被膜に接する神経が切除されるためにおこるものですが、癌の病巣が小さく、悪性度をしめすグリソンスコアが低い場合には神経温存手術を行っていますので、ご希望の方は担当医にご相談下さい。
 

小線源療法の特徴

転移をきたしていない限局性の前立腺癌を完治させるための新たな治療法として、
当院では平成16年7月より小線源療法を開始いたしました。これはエネルギーの弱い
放射性物質であるヨード125を用いた密封小線源を多数前立腺内に刺入する新たな放射線療法で、
限局性前立腺癌に対する有効な治療法として既に確立され、数多く施行されている前立腺全摘手術と
ほぼ同等の治療効果が得られると期待されている治療法です。

*小線源療法は前立腺の輪郭に沿って多数の線源を正確に埋め込むことによって、前立腺内にのみ放射線が十分照射され周辺臓器への被爆はほとんどないのが特徴で、このため外照射に比べて副作用を少なくすることが可能なのです。しかしこのことは特徴である一方、欠点でもあり、被膜外に浸潤しかけているような癌については治療効果が不十分になる可能性もあるわけです。このため小線源療法の適応は限局癌の中でもグリソンスコアが6以下、PSAが10以下のリスクの低い前立腺癌とされており、グリソンスコアが7以上、あるいはPSAが10以上の場合は小線源療法単独では治療が難しい場合もありますので、担当医師とご相談下さい。また、前立腺のサイズが40ml以上ある大きな前立腺の場合も、十分な線源挿入が困難になるため適応とならない場合があります。
線源挿入後の状態(3D-CT画像)

*小線源療法の最大の特徴は、全摘手術の合併症である、尿失禁と勃起障害がほとんどおこらないとされていることです。また外照射のような肛門直腸障害もおきにくいとされています。入院期間や治療期間も短くてすみ、治療の翌週から仕事や職場へ復帰することも可能です。主な副作用としては術後の排尿障害が比較的多く、ほとんどの場合は薬剤の内服で落ち着きますが、まれに尿閉をきたすことがあるようです。

*実際の治療の流れは、診断の確定と前立腺の形態の把握を行い、治療計画(どの位置に何個の線源を刺入するか:これをプレプランニングといいます)を策定するためにまず3日間程度入院していただきます。
その3 ̄4週間後に5日間程度再度入院していただき、線源の刺入を行うことになります。

*小線源療法は治癒したかどうかの効果判定はすぐには下すことができません。PSAは一時的にはむしろ上昇することもあるといわれています(PSA bounce)。1 ̄2年の経過観察後にPSAが最低値におちつくことでみきわめることになるようです。なお、これらの治療成績はあくまでも米国でのデータであり、今のところ日本国内での治療成績はまだ出ていないのが現状であることはご理解下さい。