限局性前立腺癌の根治療法:全摘手術について

骨やリンパ腺などへの転移が無く、周辺臓器にも浸潤していない限局性の前立腺癌は、根治療法が可能で、その治療法には前立腺全摘術があります。

 

前立腺全摘手術の特徴

*前立腺内に限局した癌をそのまま前立腺ごと摘出しますので、摘出標本をくまなく検索することにより癌の広がりや悪性度、被膜や断端、精嚢などへの浸潤の有無、リンパ節転移の有無などが確実に術後診断することができます。術後はすべての前立腺組織がなくなりますのでPSAは速やかに測定感度以下(通常0.01以下)となり、治癒したかどうかの判定を明確に行うことができ、再発の監視もPSAの動きをみることで容易に行えます。

*適応は限局前立腺癌のほぼすべてが対象となりますが、PSAが20以上、癌の悪性度を示すグリソンスコアが7-8以上あって、被膜や断端・精嚢などへの癌浸潤が疑われる場合には、ネオアジュバント療法といって治療成績を向上させるために手術前に内分泌療法を6ヶ月程度行ってから手術することもあります。
実際の手術は、臍から12 ̄13cmの縦切開を行う開腹手術が日本では標準的に行われていますが、当院では2008年より腹腔鏡手術を導入しました。全身麻酔で3時間前後、出血の量は200から600mlくらいで輸血を要することほぼはありません。以前行っていた希釈式自己貯血法(自分に対する献血といってよいでしょう)は現在行っていません。
平均の入院期間は、当科では約2週間を見込んでいただいております。

*全摘手術の合併症は、手術後にみられる尿失禁と、性機能障害(勃起障害)です。
尿失禁の程度は患者さんによって個人差が大きいのですが、多くの場合一過性で3ヶ月程度で日常生活に支障がない程度に改善してくるのが普通です。
勃起障害は前立腺被膜に接する神経が切除されるためにおこるものですが、癌の病巣が小さく、悪性度をしめすグリソンスコアが低い場合には神経温存手術を行っていますので、ご希望の方は担当医にご相談下さい。