緩和医療患者のQOL推進講習会(過去の講演会の内容)

『平成17年度 末期医療患者のQOL推進講習会』
がん末期患者への優しい医療の流れ
日 時: 平成17年12月3日(土) 13時30分〜16時00分
会 場: 札幌コンベンションセンター1階大ホール (札幌市白石区東札幌6条1丁目1番1号)
主 催: 厚生労働省
独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター
財団法人 がん研究振興財団
<プログラム>
○ 開講の挨拶
13:30〜13:35
独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター
院 長 山下 幸紀
司会:独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター
統括診療部長 西尾 正道

I . がん性疼痛認定看護師としての取り組み状況
13:35〜14:05
独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター
副看護師長(がん性疼痛看護認定看護師) 武藤 記代子

 がん患者の3分の2に痛みが伴うと言われ、当院においても痛みに苦しんでる患者が少なくなく、医療スタッフは日々その対応に苦渋している。  がん性疼痛看護認定看護師の認定を受けてから約1年が経過したが、この間の活動としては職員対象の学習会開催が主で、各病棟から患者の疼痛コントロールに関するコンサルテーションに応じる機会がほとんどなかった。今回、院内の疼痛コントロールに対する意識調査を医師・薬剤師・看護師を対象として行った。その結果、患者の痛みを緩和し、その人の望む生活が過ごせるようにとの思いを全ての人が持っているが、ある点においては医師と薬剤師・看護師との認識の差が大きかった部分もあり、今後の疼痛コントロールに関しての問題点と課題も見えたように思える。この結果を参考に、認定看護師として学んだ事柄や経験を活かし、今後、医師・薬剤師・看護師等で連携をとり、緩和チームの基盤をつくる事が出来ればと考えている。

II . 手術不能胆道がんのQOL
   〜IVRによるmanagementの実際〜
14:05〜14:35
独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター
消化器科医長 新谷 直昭

 胆管がん・胆嚢がん、膵がん、肝がんなどの胆道がんでは、病勢の進行に伴い閉塞性黄疸およびこれに伴う胆管炎を併発し、患者さんのQOLを著しく損ねる場合が多い。また、これらの原発巣が十二指腸などの消化管に浸潤・穿破すれば、消化管狭窄・出血を併発する。がん浸潤による消化管出血は、多くの場合止血が困難で、急激な大量出血をきたせば一気に不幸な転帰を取ることも多い。

 近年、これらさまざまな合併症に対するIVR:interventional radiologyによる治療の進歩には、目覚しいものがある。

 当科では手術不能胆道がんの種々の合併症に対して、経皮経肝的なアプローチのみならず内視鏡的なアプローチ、および経動脈的なアプローチも含めた集学的なIVR治療を行ない、患者さんのQOLの維持に努めている。

 PTBD*やEBD*・ENBD*などの初期減黄術と、これに続く総胆管〜肝内胆管へのチューブ・金属ステントの留置について、実際に使われるステントを供覧しながら具体的に紹介する。また、膵がんの十二指腸穿破による大量出血症例に対する、血管造影手技を用いた緊急止血術について、自験例を用いて紹介したい。

*用語解説
 PTBD:Percutaneous transhepatic biliary drainage、経皮経肝的胆道ドレナージ
 EBD:endoscopic biliary drainage、内視鏡的胆道ドレナージ
 ENBD:endoscopic naso-biliary drainage、内視鏡的経鼻胆道ドレナージ

・・・・休憩(14:35〜14:45)・・・・
III . 講演「緩和ケア〜人間として尊重する医療・福祉の原点〜」
14:45〜15:45
医療法人 東札幌病院
看護部長 長谷川 美栄子

 緩和ケアとは、治癒を目的とした治療に反応しなくなった患者さんに対して、そのときの状態に最も適した緩和的治療を行ない、QOLを高めることです。緩和ケアは、どのような状態の患者さんに対しても人間として尊重し、専門病棟のみならず、一般病棟、通院・在宅の患者さんにもニーズに応じて行われるケアであり、医療・福祉の原点とも言えます。

 緩和ケアは、チームアプローチ、ケアを実施する適切な空間、スタッフの成熟が緩和ケアの基本的な要件とされ、ケアの内容は、痛みをはじめとする症状コントロール、日常性の維持、家族のケア、倫理的問題への対処、生と死に関する様々な課題について積極的に取り組むことが求められております。これらが、実践されると患者さん及び家族のQOLは高められます。また最近は、緩和的な化学療法で、がんの進行によって生じる苦痛症状の緩和が図られている例も増えてきております。

 いわゆる緩和ケアは、患者さん、家族のQOLを高める活動なのです。普段できていた「あたりまえ」のことが、少しでも出来るようにサポートすることが大切です。

 今回は、これらの実践内容についてお話ししたいと思います。


○ 質疑応答
15:45〜15:55
○ 閉講挨拶
15:55〜16:00
独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター
副院長 内藤 春彦