北海道がんセンター

都道府県がん診療連携拠点病院
日本医療機能評価機構認定病院

診療科・センターのご案内

各センターのご紹介

センターの設置について

この6月に呼吸器センター、10月にサルコーマセンターおよび高度先進内視鏡外科センターを設置しましたのでお知らせします。

前者の設置理由は、肺がん患者および疑い患者の急増で、当院での受診および紹介患者の受け入れが、限定されたり入院までの時間がかかったりしていました。そこで、関連の呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科でお互いに入院検査などを補おうという趣旨で呼吸器センターをつくりました。紹介状持参時や地域連携室経由の紹介などで呼吸器外科、放射線科で初診、入院ということもあります。

サルコーマセンターは、比較的珍しい肉腫(悪性だが「がん」とは違う病気。悪性軟部腫瘍、骨肉腫などとも呼ばれる)を専門にみるセンターです。当院の腫瘍整形外科が以前より専門的にみていましたが、色々な部位から発生するため診断や手術などの治療に際し、全科で情報を共有するためにセンターにしました。東京以北初の肉腫専門のセンターです。

当院は以前よりがん外科治療に際し、肺がん・縦隔腫瘍に対しての胸腔鏡手術と食道・胃・大腸直腸がん、卵巣・子宮がんおよび腎・前立腺がんなどに対しての腹腔鏡手術を多く行ってきました。そして何れの科も得意とする手術手技です。このたびダヴィンチという内視鏡下手術用の医療用ロボットを導入しますので、その管理運用をスムーズにするため、高度先進内視鏡外科センターを設置しました。

院長 近藤 啓史

○呼吸器センター
 呼吸器センター長就任のごあいさつ
 呼吸器センター長 : 原田 眞雄

原田 眞雄

平成25年6月当院に「呼吸器センター」が設置され呼吸器センター長に任命されました。平成25年10月にはさらに「サルコーマセンター」と「高度先進内視鏡外科センター」が設置され、「呼吸器センター」はこれらの院内センター化構想の第1弾ということになります。呼吸器悪性腫瘍の診療を統合する新たな枠組みを作って関連各科の協力体制をより緊密にすることにより、これまでにも増して質の高い、安心できる医療を提供していこう、というわれわれの意思表示であると考えていただければ幸いです。

「呼吸器センター」に含まれるのは、中心となる呼吸器内科と呼吸器外科に放射線科と緩和ケア内科が加わった4つの診療科です。ご存知の通り、私の属する呼吸器内科はがんの診断と抗がん剤治療、呼吸器外科は外科手術、放射線科は放射線治療、緩和ケア内科は症状緩和治療のエキスパートです。呼吸器悪性腫瘍のほとんどを占める肺がんの治療では複数の治療法が併用されることが多く、各診療科の連携が不可欠です。また近年急増している高齢者や合併症のある患者さんには体にきつくない治療が求められるため、柔軟で繊細な総合判断が必要となります。これまでも各診療科内でのカンファレンスに加えて、呼吸器内科と呼吸器外科、呼吸器内科と放射線科が行う週1回のカンファレンスを通して最善の治療ができるよう努めてきましたが、今後は「呼吸器センター」としてさらに各診療科の連携を強化していく所存です。

われわれの使命はより多くの患者さんに最新最善のがん治療を安心してうけていただくことです。肺がんが増え続ける中、長くなりがちな入院待機期間の短縮、治験など先進治療をうけられる患者さんのリクルート、緩和専門病院や地元の医療機関へのよりスムーズな治療の引け継ぎ、など「呼吸器センター」が取り組むべき課題がいくつもあります。まずは関連各科の垣根を低くして限られた病床を流動的に最大活用することで患者さんの受け入れ態勢の改善を図り、患者さんや紹介医療機関からの信頼に応えていきたいと考えています。

○サルコーマセンター
 サルコーマセンター長就任のごあいさつ
 サルコーマセンター長 : 平賀 博明

平賀 博明

サルコーマ(肉腫)は、体を支える骨や筋肉、脂肪組織、末梢神経血管などに発生する非上皮性の悪性腫瘍(がん)です。肺や胃などの内臓に発生する上皮性のがん(癌腫)に比べると百分の一未満の発生率と言われており、まれにしか発生しないがんという意味で「希少がん」と言われています。

当院の腫瘍整形外科では、以前より、主に四肢(腕や脚)に発生した肉腫を専門に扱ってきましたが、肉腫は四肢だけではなく、後腹膜、縦隔、腹腔内にも発生します。これらの部位に肉腫が発生した患者さんは、発生した部位を担当する診療科、例えば後腹膜腫瘍であれば、泌尿器科や消化器外科で治療されてきましたが、患者さんの人数が少ないために、各々の施設や診療科で経験が蓄積されづらく、治療方法の確立が遅れているのが実情です。

そこで、様々な部位に発生する肉腫の患者さんに、肉腫を専門とする腫瘍整形外科を含め、関係する複数の診療科が診断から治療まで同時に関わるチーム医療を実践とする場としてサルコーマセンターを開設しました。まずは院内の基礎的なシステム作りと、知識と経験の共有から始め、ゆくゆくは道内外の患者さんを広く受け入れたいと思っております。

今度ともみなさまのご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

○高度先進内視鏡外科センター
 高度先進内視鏡外科センター長就任のごあいさつ
 高度先進内視鏡外科センター長 : 原林 透

原林 透

平成25年10月1日付けをもち、高度先進内視鏡外科センター長を命ぜられました。このセンター運営に欠かせない手術支援ロボット・ダヴィンチは10月末に当院に導入されました。

ダヴィンチは軍事用に開発され15年前に臨床応用されました。周囲を骨盤骨に囲まれた狭い術野で細やかな操作の多い前立腺がん手術に非常に有用であり、欧米で爆発的に広まりました。

現在、米国の前立腺手術の80%以上がダヴィンチを用いて行われています。日本は機器認可が遅れたため普及がおくれましたが、2012年前立腺がん手術が保険収載されたのち、状況は一転しています。

当院は北海道で9番目の導入病院となります。ロボットというと溶接をする工業用ロボットのように自動的に仕事をしてくれるものを想像してしまいがちですが、ダヴィンチは3次元の目と自在精細に動く小型の手3本をもつロボットで、患者さんの解剖と病状にあわせて動かすのは人間です。これまで積み上げられてきた技術を一段高いレベルにしてくれる道具と考えてよいでしょう。

現在当院泌尿器科ではほとんどの手術を腹腔鏡で行っていますが、当面ロボット手術は前立腺がんに限られます。しかし、細かな操作の必要な膀胱全摘、腎部分切除術でも威力を発揮すると思われます。また、消化器、呼吸器、婦人科臓器にもいずれ広まっていくことは間違いのない流れと思います

より根治性が高く機能障害の少ない手術が、多くの人に安全に施せるよう外科系センターとしてロボットを上手に活用していきたいと考えております

○外来化学療法センター
 外来化学療法センター長就任のごあいさつ
 外来化学療法センター長:佐川 保

佐川 保

平成26年1月1日付けをもち、外来化学療法センター長に命ぜられました。我が国は今や、2人に1人が「がん」になり、3人に1人が「がん」で亡くなられる時代となりました。がんになってしまった場合にはがんと向き合い、がんとうまく付き合う必要があります。

がん)化学療法とは手術と放射線治療に並ぶ、がん治療3本柱のひとつで、抗がん剤を用いたお薬による治療のことです。化学療法は腫瘍を小さくする、手術後の再発を予防する、さらには手術で切除不能といわれた患者さんの腫瘍を縮小させて切除可能にする、など重要な治療法です。

当院では2003年4月に開設された外来治療センターにおいてから外来化学療法を施行しておりました。このたび2014年1月より、これまで以上に外来化学療法全般に関わっていくために外来化学療法センターとして新たにスタートしました。

外来化学療法は今後ますます増加することが予想されます。外来で化学療法を行うことの最大のメリットは、患者さんが日常生活を送りながら化学療法を受けることによって、生活の質 (QOL:Quality of life) を維持することができることです。具体的には化学療法を外来で受けることで今まで通り仕事も続けることができますし、趣味を楽しむこともできます。休薬中には長期間旅行にも行くことも可能になります。

医療者側にとっては、患者さんの自宅でのがんに関連する症状や副作用の状況を、外来での診察という比較的短時間に正確に把握する必要があります。そのため、抗がん剤治療に精通する医師、看護師、薬剤師などにより患者さんの情報を医療者間で共有化するチーム医療を行っております。「より快適な環境で確実かつ安全な外来がん化学療法を提供する」という信念に基づき、外来化学療法を提供していきたいと考えております。

【診療科別化学療法施行数】

【年度別外来化学療法件数】

○内視鏡センター
 内視鏡センター長就任のごあいさつ
 内視鏡センター:藤川 幸司

藤川 幸司

平成26年1月1日付で「内視鏡センター」が設置され、センター長を拝命しました。主な業務内容は、「内視鏡室」で行われる呼吸器・消化器内科の内視鏡関連およびX線透視を用いた検査・処置です。その内容は表1のように多岐にわたり、使用する機器も複雑化し、より高度な技術や管理が必要とされます。そのため、これまでも部門や業種の垣根を越えた取り組みが成されてきました。平成24年からは、臨床工学技士の皆さんに機器保守管理だけでなく、手技介助も協力していただいています。平成25年度からは洗浄助手さんが導入されました。また、内視鏡手術では麻酔科と連携するケースもあり、安全で円滑な業務に努めてきましたが、センター化にて、さらなる連携強化を考えております。

また、患者さんにとっても便利で身近なセンターを目指して、がん検診で要精査になった患者さんの地域医療連携室を経由した外来予約、鎮静下での検査の充実、ミニドックの検討など新しい取り組みを考えています。一方、外来スタッフによる検査説明や入院患者さんの術前訪問など、従来の業務も見直し、患者さんの要望に応えられるよう改善していきたいと考えております。

昨年12月には大腸カプセル内視鏡を導入し、1月1日からは保険適応になりました。道内では3施設、札幌市内では当院が初めての導入です。大腸検査が必要な患者さんで、大腸ファイバーでは癒着などで痛みが強かった方や挿入困難だった方、腹部手術歴がある方はカプセル内視鏡の良い適応かもしれません。また、CTによる大腸仮想内視鏡検査も行っております。今までは苦痛で困難だった検査が、新しい機器によって可能になりますので、地域医療連携室にお問い合わせください。

○前立腺センター
 前立腺センター長就任のごあいさつ
 センター長:永森 聡

永森 聡

前立腺疾患は加齢と共に増加し、高齢化が進む我が国では今後ますます増加することが予想されています。そして前立腺疾患には、良性である前立腺肥大症と悪性である前立腺癌があり、いずれも50歳より増加すると言われています。

この前立腺の2大疾患に広く対応すべく、当院では前立腺センターを開設し、治療に当たることと致しました。前立腺センターには、泌尿器科、放射線科の2つの診療科が所属し、そのほか外来化学療法センター、高度先進内視鏡外科センターと連動して治療を進めていくこととなります。

そしてこれらの前立腺疾患で重要なことは、2つの疾患の初期の臨床症状には全く差が無いために、鑑別診断が必要となります。従って排尿困難などで当センターの泌尿器科を受診された男性は、まずPSA(前立腺特異抗原)検査を受けていただくこととなります。このPSAは20世紀最大の腫瘍マーカーといわれ、これら2つの疾患の鑑別に非常に役立つことが全世界的によく知られています。そこでPSAの値で、低値の場合は泌尿器科専門医により前立腺肥大症として外来での排尿機能検査が施行された後に投薬治療が開始となります。髙値の場合は1泊2日での前立腺生検(針で組織をとる検査)となります。そしてもし組織検査で癌と診断がつき、転移がなく根治的治療が可能な場合には、次に治療法の選択となります。幸い当センターでは、前立腺癌に対して3つある全ての根治的治療に対応可能です。それは①手術療法(最新の手術支援ロボット ダヴィンチを用いた内視鏡手術)は高度先進内視鏡外科センターと共同で行います。②放射線療法(外照射)は精密な強度変調放射線治療(IMRT)を放射線科と協議の上で行います。③放射線療法(内照射)は小線源埋め込み療法(ヨード131)を放射線科と共同で行います。

なお、これらの根治的治療は他の医療機関で既に前立腺癌と診断された方でも、常時お受けしておりますし、特に排尿の症状の無い50歳以上の男性には、当院で以前からお勧めしているPSA 1時間検診(採血後1時間で結果がわかります:要予約)を受診していただき、その後の対応をセンター長の永森が指導しています。また既に転移のある方も、当センターと外来化学療法センターが共同で対応しております。

当院はがんセンターであるため、これまで排尿症状だけの方や他の検診センターでのPSA検診の煩わしさ(検査を受け、後日結果の通知があり、泌尿器科を受診する)があって受診できなかった方々を広くお受け致しておりますので、気軽に受診していただきたいと存じます。