生物の体は細胞という単位でできています。
細胞の分裂は遺伝子などにより厳密にコントロールされているのが正常です。
例えば皮膚は古い皮膚の細胞が垢となっておちていく量と、皮膚の元になる細胞が分裂して新しい細胞が増える量とのバランスがとれているため、極端に皮膚の厚さが変わらないように調節されています。
ところが腫瘍では分裂のコントロールが異常となり、増えなくてもよいのに細胞がかってに増えて細胞の塊(=腫瘍)を形成してしまいます。
原因は遺伝子によるコントロールの異常です。
それでもある程度のコントロールが効いているのが良性腫瘍であり、まわりの組織にまだそれなりの配慮がある程度の増え方をします。
ところが悪性腫瘍になると、周囲の状況はお構いなしに大きくなるどころか、リンパや血液の流れにのって離れたところに移動していき、そこでも大きくなってしまします。
「がん」という言葉は一般用語であり、「悪性腫瘍」という医学用語のことを意味します。ですから、「がん」と「悪性腫瘍」は同じです。白血病のことを、「血液のがん」とも、「血液の悪性腫瘍」とも言います。同様に、骨肉腫を、「骨のがん」や「骨の悪性腫瘍」と言うこともできます。
通常、漢字で「癌」という場合は、厳密には「癌腫」のことをさしており、「上皮から発生する悪性腫瘍」のことを示します。
では上皮とは何でしょうか。簡単に説明すると、「体の表面を覆っている膜」です。
皮膚、胃粘膜、大腸粘膜、肺胞上皮、肝細胞などたくさんあり、これらはすべて体の表面なのです。
肝臓が体の表面というのは変な感じがしますが、順を追って説明しますと、まず胃カメラを使うと体に傷を付けずに胃粘膜を観察できます。なので、胃粘膜は「体の表面」です。
同様に、連続する管状の部分はすべて体に傷をつけずに(理論的には)到達可能な体の表面です。人間はちくわのようなものであり、胃カメラはちくわの内側を覗いているようなものなのです。ちくわの内側に細長いくぼみがありそれが肝臓です。逆に考えると、肝臓で産生される胆汁は、胆管や腸を通り、体外に排出されます。腎臓も尿道から膀胱、尿管と逆流していくとたどり着きます。乳腺も乳管が皮膚と連続していますので体の表面です。
このような臓器(=ちくわの表面)に発生したのが「癌」です。
正しくは、発生の段階を踏まえて考えなければいけませんが、とりあえずはこれであっています。
では「肉腫」というは何かというと、悪性腫瘍の中で癌以外のもの、「非上皮(非上皮以外)から発生する悪性腫瘍」ということになります。ちくわの身から発生したのが肉腫です。骨や筋肉、神経、血管は、どこか体に傷をつけないと行き着けませんね。関節液は針を刺さないと採取できません。
このような臓器が非上皮です。