ホーム > 乳癌の手術について

乳癌の手術について

乳癌の手術は通常全身麻酔下に行います。
当院には日本麻酔学会専門医が複数常勤しており、
安全で的確な麻酔管理下で手術が行われています。

手術療法

乳癌の手術は、乳房に対する手術と腋窩リンパ節に対する手術を同時に行います。
手術方法はこれらの方法の組み合わせにより決定します。

乳房に対する手術

乳房部分切除(Bp)

いわゆる乳房温存手術です。しこりの大きさが3cm以下であればお勧めできる治療法です。乳房温存療法は安全に治癒切除を行うことと美容的有用性を確保することが目的です。そのためには乳癌の広がりを正確に把握する必要があります。当院ではCT検査やMRI検査を広がり診断に用いています。乳房温存療法を受けた場合には、手術をした乳房に放射線治療を行う必要があります。放射線治療は外来で通院可能です。

胸筋温存乳房切除(Bt)

いわゆる乳房全摘術です。しこりが大きい場合や、複数存在する場合、しこりは大きくないが、しこりにつながる乳管という管の中に広く進展している場合は、乳房温存手術ではがんを完全に取り切れないため、胸筋温存乳房切除(Bt)が必要になります。





腋窩(えきか)に対する手術

腋窩(えきか)リンパ節郭清

リンパ節郭清とは、リンパ節をその周囲の脂肪組織とともに一塊にして切除する手術です。腋窩の再発を防ぐという治療的目的の他に、腋窩リンパ節に転移があるかどうか、転移があれば何個のリンパ節に転移があったのかを調べる診断的目的があります。腋窩のリンパ節の転移個数により将来骨や肝臓、肺などへの遠隔転移が生じる確率が違うため、腋窩リンパ節の情報は抗癌剤などの薬物療法を行うかどうかの選択には非常に重要です。

センチネルリンパ節生検

腋窩リンパ節郭清は長らく乳癌の標準術式として行われてきました。しかしながら、リンパ節転移のない患者さんには治療的意味はなく、むしろ腕のむくみなどの合併症の問題がありました。最近、しこりのある乳房に色素とアイソトープ(放射性同位元素)を注射することにより、乳房のがんが最初にたどり着くリンパ節を同定することが可能になりました。このリンパ節のことをセンチネルリンパ節(見張りリンパ節)といいます。センチネルリンパ節にがん細胞がなければ、それ以外のリンパ節に転移はないと判断できます。したがって、このセンチネルリンパ節(通常1〜3個)を摘出し、がん細胞があるかないかを手術中に調べ、もしなければ、腋窩リンパ節の郭清は行いません。転移があった場合は通常のリンパ節郭清を行います。したがって、このセンチネルリンパ節を正確に同定することは非常に重要で、多くの施設ではアイソトープが使用出来ず色素法単独でセンチネルリンパ節を同定しています。色素法単独よりもアイソトープ併用法の方がセンチネルリンパ節同定率がわずかに高いことが、多くの論文で報告されています。当院と同様に色素とアイソトープを併用してセンチネルリンパ節を同定しているのは北海道内で数施設しかありません。

乳癌の手術法は乳房に対する手術と腋窩に対する手術を組み合わせておこないます

主治医は術式として、たとえば乳房円状部分切除+センチネルリンパ節生検や胸筋温存乳房切除+腋窩リンパ節郭清など、あなたの病状に合わせた複数の手術法につき医学的な見地から説明があると思います。それらの中から、主治医とあなたが話し合い最終的な術式が決定されます。

内視鏡手術について

当科では、乳房温存療法を中心に希望者に鏡視下でも手術を行っています。鏡視下手術は可及的に小さく目立ちにくい場所に創をおきカメラや内視鏡機器を用いて手術を行います。切除範囲は通常の手術と変わりはないので根治性が損なわれることはありません。また整容性維持のために内視鏡手術の特性を利用して乳腺を広く授動し乳房形成します。内視鏡手術の術者はこの手術の経験豊富な医師が担当するため安全性には問題ありません。

乳房再建について

マンモグラフィ, 超音波、CTなどの術前診断で広範なDCIS(非浸潤性乳管がん)や小さな浸潤癌でも広範な乳管内進展を伴っていると判定した場合は、早期乳癌ではあっても局所再発や美容形態学的問題から乳房温存術よりも乳房全摘術をお勧めすることがあります。そのような再発リスクの少ない患者さんは、化学療法で腫瘍を小さくして乳房温存をめざすいわゆる術前化学療法の対象にならないことが残念ながら多いのが現状です。進行癌ではない患者さんに対して乳房全摘術を行った場合、我々は患者さんの希望があれば札幌市内の乳房再建専門の形成外科の先生と連携して二期的乳房再建を行っています。乳房のふくらみが早期に回復可能なことから乳房全摘直後にエキスパンダーを挿入する手術を行い、手術後少しずつ乳房を拡張し、その後は形成外科で最終的な再建手術を行う方法もあります。乳房全摘術が必要であっても、内視鏡手術で創を小さくしながら安全に乳房を全摘し、同時にエキスパンダーを挿入することで少しでも乳房の喪失感を少なくする方法も試みています。今後は、対象となる患者さんを広げることも検討中です。

放射線治療について

温存乳房への照射

乳房温存療法は乳房温存手術と温存した乳房に放射線治療を行うことを基本としております。放射線治療は通常週4回施行し、約5,6週間かかります。1回の治療に用する時間は数分ですので、外来での通院治療が十分に可能です。病院から自宅までが遠くて通院困難な時は、放射線治療のできる地元の病院を紹介しますが、当院のベッドの空きがあれば入院して治療することも可能です。

乳房全摘後の照射

乳房全摘術を受けられた方は、通常放射線治療が必要ありません。ただし、腫瘍径が5cmを超えていた方やリンパ節転移が4個以上あった方は、乳房全摘をしても生存率向上のために放射線治療が必要です。

再発乳癌に対する放射線治療

放射線治療は、再発・転移された方にも使うことがあります。再発・転移乳癌は全身治療が基本になります。放射線治療を行う場合は局所のコントロールが目的になります。強い痛みを伴なう骨転移などに放射線治療を行うことで症状が和らぐことが期待されます。

手術後も再発治療でも同じですが、放射線治療はホルモン療法やハーセプチンと同時に行うことはありますが、乳癌では原則として化学療法と放射線治療を同時に行うことはありません。

ホームへ

トップヘ