呼吸器外科

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悪性胸膜中皮腫 ~胸膜の悪性腫瘍~について

【悪性胸膜中皮腫について】

胸膜・腹膜のイメージ

•石綿(アスベスト)の曝露よるものが多く、7-8割の患者さんに曝露歴があるとされてります。
•中皮細胞から発生する腫瘍ですので、胸膜や腹膜や心膜から発生する可能性がありますが、8割が胸膜から発生しています。
•日本では、2006年に石綿の製品の製造は禁止されておりますが、曝露から発症までの期間は15年から40年と長期間であり、今後も増加していく可能性があります。悪性胸膜中皮腫は珍しい病気ではありますが、中皮腫全体の死亡数は日本全体で1504人、北海道で67人(2015年)と徐々に増加しています。

【症状について】

•咳・胸痛・呼吸困難が出ることがありますが、特徴的なものではなく、症状での発見は難しいとされています。
•症状が無くとも健康診断での胸部X線写真で胸水貯留により見つかることがあります。 胸膜腫瘤や胸膜肥厚で見つかることもあります。

【検査について】

•胸に針を刺して胸水を採取します。
•胸水の検査で悪性が考えられ、悪性胸膜中皮腫が疑われれば、胸膜針生検や胸腔鏡手術での胸膜生検を行って診断を行います。
•胸水のみの検査で確定診断は難しいです。
•CTやPET検査を行い、リンパ節転移や遠隔転移が無いかを調べます。

【組織型について】

•上皮型と肉腫型と二相型の3つに分類されます。
•上皮型が他の2つの組織型よりも予後が良いとされています。

【治療について】

•手術と化学療法と放射線治療を組み合わせた治療を行います。
•手術に耐えられる場合は胸膜肺全摘術を行いますが、侵襲が大きな手術です。胸膜切除・肺剥皮術は時間がかかる大変な手術で、術後の肺瘻が長引く手術ですが、肺を残すことができます。どちらの手術がより良いかははっきりしていません。

【予後について】

•非常に予後が悪い病気です。
•無治療であれば、発症から半年から1年半で亡くなります。
•手術のみでは予後不良であり、化学療法と放射線治療の3つを組み合わせた治療を行うことで、生存期間が2年程となる可能性があります。
•若年、女性、CTで腫瘍がはっきりしない、上皮型、リンパ節転移がない場合などは長期予後を得られる可能性があります。