2022年1月1日よりセンター長を拝命いたしました。西原広史先生(現慶応義塾大学病院腫瘍センター教授)、高橋將人先生(現北海道大学病院乳腺外科教授)が構築された体制を引き継ぎ、後任としてがん患者さんに有効な治療を届けるべく日々努めて参りたいと思っております。
がんゲノム医療とは、患者さん個人の遺伝子情報に基づき、どのような抗がん剤(分子標的治療)を選ぶのがよいか、免疫治療は効きやすいかなど個別に治療を決めていく医療であり、当院では保険診療下で検査を取り扱っております。10割負担額で56万円 (3割負担で約17万円)と高額ですが、高額療養費制度を用いて負担を軽減することが可能です。
対象患者さんは、進行固形がんですでに標準治療を終えられている方、あるいは原発不明がんなどのまれな腫瘍をお持ちの方になります。患者さんのがんの一部や血液を約100~300個の遺伝子を搭載したパネル検査にかけて、その結果をもとに治療方法を見つけます。
当院は2019年9月に道内では唯一のがんゲノム医療拠点病院として厚生労働省より指定を受けました。すでに北大病院ががんゲノム医療中核拠点病院に認定されておりますが、道内のがん患者さんにゲノム医療を広くお届けするため、北大病院を補完する形で当院もエキスパートパネルという専門会議や遺伝相談などの医療提供体制を整え、2020年4月よりがんゲノム医療を開始しております。
当院では各臓器がんの専門医、がん薬物療法専門医、遺伝性腫瘍を専門とする医師、遺伝カウンセラーなど様々な医療従事者が集まり、がん遺伝子パネルの結果を詳しく話し合い、北大病院などと道内・国内の最新治験、患者申出療養制度、先進医療情報を共有し、患者さんに最適治療をご提供する体制を整えております。ただ、この検査を行っても新たな治療に結び付く患者さんは10%程度にとどまっていることにご留意ください。また患者さんに発生したがんが遺伝性のもの(遺伝性腫瘍)であることが偶然発見されることもあります。ゲノム医療を受ける前にはこの情報を知りたいか、知りたくないかを事前にお伺いいたします。知りたいというご希望があり、遺伝性腫瘍の可能性が高いという結果が返却された際には、当院の遺伝カウンセラーに、治療のこと、遺伝のこと、心配ごとを相談することができます。
ゲノム医療を希望される当院の患者さんは、担当主治医とご相談いただき本医療の対象であること、意義があることをご確認ください。院外の方は主治医を通して当院担当の診療科にご相談いただいた上ご紹介いただければと思います。初めて本検査を受ける際には当院のがん相談支援センターがパンフレットを通して、検査内容をわかりやすく説明いたします。
北大病院や道内のゲノム医療連携病院の先生方ともご一緒に、このがんゲノム医療を通して道民のがん医療をさらに充実させて参りたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。