腫瘍循環器センターは2023年、これまでの腫瘍循環器センターから腫瘍循環器・生活習慣病センターと名称を変更して新たなスタートを切りました。
センターの目的は大きく分けて3つあります。
第一は、がんに合併した、あるいはがんの治療により新たに引き起こされた心血管疾患を診断し治療するというセンターの最も大切な役割です。これは、これまでと何ら変わるものではありません。
この度、新たに生活習慣病が腫瘍循環器センターの名称に加わりました。生活習慣病には日本人の三大死因であるがん、心疾患、脳血管疾患および、その危険因子となる動脈硬化・糖尿病・高血圧・脂質異常症、肥満などが含まれます。生活習慣病は、その名の通り食生活、喫煙、運動習慣などの生活習慣が深く関わり、加齢とともに増加します。がん医療の進歩に伴い、がん患者さんの寿命は延びており、がんと心血管疾患を合併する患者さんは、今後増加することが予想されます。
また近年、がん治療後は心血管疾患のリスクが高くなることも明らかとなってきました。がん治療が終了後の患者さんの人生は、がんサバイバーシップと称され、がん治療期間よりも長くなることも稀ではなくなり、がん治療中と変わらない管理の必要性が謳われています。
これからの時代、がんと心血管疾患を各々独立した疾患として診るのではなく、疾患の枠にとらわれない、生活習慣病という広い視点も必要と考えます。そこに腫瘍循環器・生活習慣病センターの名称の由来があります。
センターの第二の目的は、広報です。センターが、がんの患者さんのお役に立つためには、まずは患者さんや連携する医療機関、更には一般社会にその存在を広く知っていただき、その重要性を理解していただくことが必要です。そのためには、センターの広報活動の場を院内中心から、病院の外へ向かって、広げてゆくことが求められます。例えば、患者さん向けの講演会、連携する医療機関との勉強会、一般の市民の方を対象とした医療相談や健康診断などです。これらにより腫瘍循環器と生活習慣病が身近な存在になることを目指します。
最後、三つ目の目的は、センターを有効かつ効率的に運営するための戦略を考えることです。がんセンターにおいて循環器内科は異質の存在です。腫瘍循環器と生活習慣病を、ひとつのセンターと称する組織は、全国に今のところ見当たりません。限られた医療資源の中で、腫瘍循環器・生活習慣病センターが、がんセンターの組織の歯車に組み込まれ有効に機能するためには、先例にとらわれない発想と知恵、工夫が必要です。私たちは、病院事務やコメディカルスタッフと協力しながらそのための方法を考え、実践に移します。
がん医療は、がんと診断されたときから始まり、治療中、そして治療後も続きます。腫瘍循環器・生活習慣病センターの設立は、北海道がんセンターが、生涯に渡り患者さんに寄り添ってゆくというひとつの意思表示でもあります。私たちは、個々のがん患者さんのことをよく知る循環器内科として、ご紹介をいただいた医療機関とも連携しながら、がん患者さんの一生の拠り所となるようなセンターを目指します。